シリーズ開始!精神科テーマの映画紹介『17歳のカルテ』
僕がここで、どうしても人に紹介していきたいことがあります。
それは、「精神科にまつわる映画」です。
精神科を舞台にしたり、精神疾患を抱える患者を描いたりした映画は、なんだか怖いもの見たさがあると思うんですが、中身は人間の心を描くことに迫った深ーい、深ーーい映画が多いです。
僕はもともと高校生くらいの時から、なんとなく精神疾患への興味があって、それにまつわる映画を観ることが多かったように思います。看護師として勤務していた時も、先輩からおすすめの映画を教えてもらったらすぐに観て、そのたびに深く感動していました。
そういえば、精神科での勤務が長い人も同様に、精神科をこよなく愛している人が多いですね。周りからは理解されないことが多いんですが、この気持ちはなんなんだろう。笑
前置き、余談が多くなりましたが、記念すべき初回に紹介したい映画は、
「17歳のカルテ(原題:GIRL, INTERRUPTED)」
日本公開年:2000年
監督:ジェームズ・マンゴールド
脚本:ジェームズ・マンゴールド、リサ・ルーマー、アンナ・ハミルトン=フェラン
原作:スザンナ・ケイセン『思春期病棟の少女たち』
です。原題は「こじらせた女の子」って感じでしょうか。
映画冒頭でのスザンナのセリフにもありますが、ここでは「つまずき」との字幕です。
激動の60年代アメリカを生きる主人公スザンナ・メイセン(ウィノナ・ライダー)は、将来について思い悩み、「こじらせ」、自殺未遂を図る。境界性パーソナリティ障害の患者として「クレイモア精神病院」に入院させられるが、そこでの生活の中で彼女はどんな将来を選択するのか。
女性病棟の中での患者やスタッフたちとの関わりの中で、大きく揺れ動きながらも成長していく、実話に基づいたストーリー。
主演を演じたウィノナ・ライダーは自らが境界性パーソナリティ障害と診断された過去があり、この原作に惚れ込んで自ら製作総指揮を行ないました。
ほかにも主要キャストで言えば、一躍有名になる直前のアンジェリーナ・ジョリーが出演していることで知られています。
あと、「天使にラブソングを」シリーズでお馴染みのウーピー・ゴールドバーグが母性溢れる看護師役を演じているのも素敵ポイントです。
とにかく、印象的なシーンだらけ。揺れ動くスザンナや周囲の患者たちの心の描写がリアルで鮮やかで、何度観ても感動。。。
ここからは大きなネタバレにならない程度に、個人的な楽しみポイントを紹介していきます。
①テレビの中の「社会」と、病院の中の「社会」。スザンナは何処?
スザンナ視点から見ると、この「社会」は両親や学校が、彼女の生きる道としてすすめる社会です。なんとも馴染めない、馴染みたくないという気持ちが、このシーンを印象強く描いているのかもしれません。
また、スザンナは病院の患者たちとも一線を置きたがります。強制入院となった当日、病院のオリエンテーションをする中ですれ違う、異質な患者たちによる「社会」もまた、彼女は馴染みにくさを感じています。
スザンナは一体どこを生きるのか。「境界線(ボーダライン)」にあるのか。
②アンジーの演技が凄まじい
反社会性パーソナリティ障害で長年入院している患者リサを、アンジェリーナ・ジョリーが演じていますが、「犯罪的に異常」な演技力に圧倒されます。
こってこての反社会性パーソナリティ障害患者として、ものすごく悪いことを働きながらも、患者たちのリーダー格としてどんどん人を巻き込んでいきます。それはスザンナも同様に…
病院の中という、狭い社会では彼女は生きるのがとても上手に見えますが、果たして。心に抱えている深すぎる闇までも、みごとにアンジーが演じています。
③仲を深めるスザンナとリサ
リサはかつての親友が入院していたベッドに入院してきたスザンナに興味を持ち、スザンナもリサの強烈ではありながらも爽快感を覚える彼女の生き方に惹かれ、深い友情で結ばれていきます。やがて彼女らは病院からの脱走を試みますが、それにより事態は大きく変わっていく。
スザンナ視点で描かれる映画ですが、リサはこの中でどんな心境で過ごしていたのか、考察したくなります。
ほかにも、サブキャラクターとして登場する患者たちの生い立ちやその後というのにも、考えてみたいなあと思うくらい、みんなとても個性的です。それくらい描写がナラティブ、というか、鮮やか、というか。けど心の中は見えそうで見えきらない。こういうところが、何度も観返したくなる理由なんでしょうね。
まだの方も、もう観た方も、ぜひ観てみてください。
ここまで読んでくれたあなたに…ざっくり精神科メモ
映画に出てくる精神科に関連する言葉を解説します。間違っていたらコメントください。
パーソナリティ障害のひとつ。不安定な自己と他者関係のイメージや、両極端なものの考えなどから、感情や衝動性が抑えきれず、自己や周囲に対して破壊的な行動をとってしまう障害。
「ボーダー」「ボーダーライン」と略される。医療者同士でよく「あの人ボーダーっぽいよねー。」と俗っぽく用いることがありますが、この文脈の中では「人を振り回す」の意味合いです。