こころ と あたま

精神科看護師を経験し、将来は精神科医を目指して今春から医学生になる僕のつぶやきです。概ね私見なのでご承知願います。

ウイルスよりも大きく、はやく広がるデマ

ティッシュペーパー等の紙製品が軒並み品薄ですね。
元々、「新型コロナウイルスに関連して、中国で紙製品の工場がストップしたために、今後紙製品の不足が起こる。」というデマが拡散されたために、それに不安を感じて買いだめする人が多かったようです。
 
今では公的にこれがデマであると説明され、未だに信じている人はいないと思いますが、デマであるとはわかっていても、「デマを信じる人が買い占めちゃうから、売り切れる前に買っておこう。」という人も多く、状況が良くなるにはしばらく時間はかかりそう。
花粉症の僕にはマスクの品薄に続き、さらに追い討ちをかけられることになっているので、けっこう辛いです。
 
情報化が進む中、実在するウイルスよりも遥かに大規模で、拡散速度の大きい「デマ」にフォーカスをあてて考えていこうと思います。
 

デマは嘘だけど安心できる

人は不可解なものに対して、きちんと説明がつかない場合、恐怖を感じるようです。
恐怖を感じると同時に、安心を求めます
そんな状態にあるとき、安心へと向かわせる情報を提示されたらどうでしょう。
普段なら慎重に物ごとを考える人であっても、根拠にこだわらず、その情報に飛びついてしまうでしょう。この情報が実際には間違っている場合や、また曲解を招いた場合が、「デマ」になると考えます。
 
今回の事例でも、
新型コロナウイルスCOVID-19の感染拡大、迫られる対応
→いろいろあってトイレットペーパーが不足するらしいから、買いだめすべし
という流れが見えます。
 
似たもので言えば都市伝説です。謎が多いものについて、その深層についての考察を怖がりながらもなんだか納得できる点があることで妙な安心や爽快を感じるのも、同じ流れですね。
 

デマの威力を弱める方法

人びとが未知のものに対して恐怖を感じているほど、また規模が大きいほど、デマの威力は大きくなります。
今はかなりの恐怖ですね。新型の感染症が世界的に流行している状況で、情報はオンラインですぐ全世界に発信できる時代ですから。
 
一般の人たちがとてつもなく恐怖を感じている中、医療関係者は冷静に、周りにもその態度を呼びかけているのは、医療者がウイルスに関して人よりも「知っている」から。正しい情報を発信して、人びとがウイルスについてもっと正しく知ることで、デマにふり回されないようにしていきたいですね。
 

デマ対策の理想論①「報道せねばならない」からの脱却

ニュースは、休まずに発信され続けています。
テレビニュースでも、よく毎日あれだけの分量のニュースを集めて編集して、放送してるなぁと感動します。
 
ただ、放送枠などがある分、「報道の義務」に追われて、連日同じ話題ばかりになると、情報を集める側もどうしてもネタ切れ…という状況になっていないでしょうか。この苦しいなかで新しいことを発信せよ、と言われると、ついつい本題からずれた情報に走りがちです。
この中では、曲解を招くような情報と出会い、デマとなり拡散してしまうリスクがどうしても大きくなってしまう気がします。
 
僕が考えるのが、「新しいネタができるまで、ニュース休みます」スタイル。
無理やりの話題作りのために、曖昧な情報を集めなくて済むわけですから、作る側の気持ちがぐっと楽になりそうです。厳選した特ダネだけを報道することで、すっきりと整頓された番組作りにも繋がりそうですね。
 
デマの拡散うんぬんより、報道の質自体を上げるためのひとつの方法なのかなぁと思います。
あと、ついでに働き方改革への便乗。
 

デマ対策の理想論②超理性的SNS

さすがにメディアの情報はある程度検証されたものが多く、とんだデマは飛び出しにくく、SNSが出元のデマがほとんどのようです。
SNSでデマが発信されないようにするためには、使用者がみんな「超理性的」になることです。
「紙製品の工場がストップしたらしい。紙製品が軒並み不足するな。でも本当かな。確か流通する97%のトイレットペーパーは国産(*1)だから大丈夫か…」みたいに。
 
どんな問題においても、みんながこれだけ冷静に考えていくためにいろんなことを勉強するのに必死で、経済がひとつも回らなくなるというデメリットがあります。
 
この2つはあくまで理想論で、折り合いをつけたり、批判されたりして現実になっていけばいいですね。
 

科学ですべてはわからない。すべてがわからないのが科学

世の中解明され尽くしていないものがほとんどです。柿のゲノムですら、最近になって解読されたくらいです。

 

科学というものがそもそも、自然の解明のためにあれこれ研究する分野だから、未知の部分があって当然。答えがなくて当然。得体の知れないものが怖い気持ちは分かりますが、わかりきっていないものに対して、答えを求めすぎないように。

 

 

(*1)「トイレットペーパー 在庫は十分」買いだめの動きに工業会 | NHKニュース