こころ と あたま

精神科看護師を経験し、将来は精神科医を目指して今春から医学生になる僕のつぶやきです。概ね私見なのでご承知願います。

初めて観るときは観なおし必須!『ビューティフルマインド』

※この記事はネタバレを含みます。この記事を読んでからだと初めて観るときの面白さが半減するので、まだの方はとにかく観てください。
 
今日は前回の記事、

 

psy-nstodr.hatenablog.com

 

の冒頭でも述べた、この映画の紹介です。
 

『ビューティフルマインド』(原題:A Beautiful Mind)

ビューティフル・マインド (字幕版)

公開年:2001年
脚本:アキヴァ・ゴールズマン
 
実在する数学者、ジョン・ナッシュの半生を描いた同名の伝記が原作。
プリンストン大学院に奨学生として入学した将来有望な天才、ジョン・ナッシュ(ラッセル・クロウ)は、内気で頑固な性格で、学校生活にうまく馴染めず、授業にも出席せず、ただ自身の興味ある研究に没頭する。
授業に一度も出席せず、どこへも推薦できないと教授から言われるが、ひょんなきっかけで「ゲーム理論を発案し、人生は上向きに動き始めたように思えた。しかし…?
 
精神科映画シリーズ、初回〜前回までの3作品が、精神科病棟が舞台での映画だったのですが、初めて主人公の生活を長期的に描く映画になります。タイトルから察する通り、むちゃくちゃ泣ける。むちゃくちゃ感動する。
 

展開にひたすら驚く

※もう一度言いますが、ここからは本当にネタバレシーンです。
 
この映画の魅力を、ネタバレ抜きで語ろうとするのが難しい理由。それは2回以上観た人ならわかるんですが、ジョン・ナッシュ統合失調症を発症しているのがもう序盤の序盤だからルームメイトであるチャールズ(ポール・ベタニー)がすでに幻覚。初めて観たときの衝撃よ。
僕がこの映画を初めて観たのは、友人宅で遊んでいて、「とくにおすすめの映画観せたるわ。」と言われ、なんの前情報もなしに観たときでした。スパイ映画かと思ったら、衝撃。僕におすすめってそういうことかってなった。笑
観終わってから勝手にひとりで観なおしましたし、家に帰ってからもレンタル屋で借りて観て、いい映画過ぎて泣いた。
 
ネタバレしちゃっていいんだから、今日は心に残る名場面トップ3にします。
 

第1位:アリシアとの初デート、ジョンが滅多にみせない「素」の表情

のちの妻となるアリシア(ジェニファー・コネリー)との初デートシーン。変わり者同士のふたりは星空を下に急接近していきます。
「何か形を」とジョンが言い、「傘」とアリシアが答えると、ジョンは星を結んで「傘座」を描きます。次は「蛸」を…と、幸せーな時間が流れます。
いやー、数学すげぇ。
 
注目すべきはジョンの表情。いつも考えこんでいたり、何かに怯えたりする彼ですが、この時の表情がとにかく穏やか。妄想に支配されつつある「あたま」ではなく、彼が「こころ」で対話できているシーンです。
 
そういえば、なんで「傘」と「蛸」なんでしょうね。
共通することは…8? (傘の骨と蛸の脚)
8は関ジャニ的に…∞?
映画の中でのひとつのキーワードでもある「無限」を意味しているのだと推測します。(無理矢理)
 

第1位:「こころ と あたま」の由来!病気の克服に向けて動き出すきっかけ

入院での「インスリンショック療法(後述)」を中心とした治療により、一度は幻覚も治まり、退院して静かに暮らしていたジョンでしたが、薬を飲まずに隠していたことで幻覚が再びあらわれるようになります。医師より再度入院を迫られますが、ジョンは「時間がほしい」とのこと。
アリシアは、ジョンを苦しめる「あたま」の中の「夢」から解放するため、彼の美しい「こころ」で病に立ち向かうように語りかけます。
ここから、ジョンにとっては辛くて長い、病気との戦いが始まる…。
 
実際のところ、根性で治すことはかなり厳しいので、おすすめはできません。
ただ、ここからラストシーンへのつながりが感動的すぎて。特に幻覚であるルームメイトとその姪との「別れ」を告げるシーンとか、胸がぎゅうぎゅうになりますわ。
 
因みになんですが、このシーンに感銘を受け、ブログタイトルを「こころ と あたま」にしました。
 

第1位:名誉に捧げられるペン…感動のラスト

「こころ」での克服を始めて数十年後、ジョンがノーベル賞を受賞することに。相変わらずの調子で、自身の病気について話していると、周りの人たちから続々と名誉のためのペンが渡される。映画序盤で彼が悔しい中で目にした夢見た光景。その中心に彼がいた…
ノーベル賞授賞式では、支えてくれたアリシアへ言葉を捧げる…
その後、遠くから彼を眺める幻覚たち…
全ての描写が泣けるーーーー。
もう1回観てきますね。
 
 
以上の3つが1位タイで優勝しました。誤植を疑った人ごめんなさい。ほんとうに、それぐらい感動的なシーンばかりで、闘病するジョンの姿もかなり印象的なんですが、それにも勝る勢いで感動の嵐です。ほんとうに心に残る素敵な映画だなあ。
 

ここまで読んでくれたあなたに…ざっくり精神科メモ

インスリンショック療法
1950年代頃までは行われていた、統合失調症治療のためのショック療法の一つ。
血糖値を下げるホルモンであるインスリンの製剤を多量に投与し、極度の低血糖にすることで、患者をショック状態にします。その後、ブドウ糖を投与して意識を回復させます。この一連の流れを繰り返すことで症状が治まっていくという治療法です。
脳はすごく不思議なもので、他の組織とは違ってタンパク質や脂質をもととするエネルギーを利用できず、糖のみがエネルギー源となります。極度の低血糖になることは、脳にとって「危険な状態」なので、さまざまな事故のもとになります。
このようにリスクが高いこと、さらには統合失調症の治療薬である抗精神病薬の開発が進んだことで次第に行われなくなりました。