こころ と あたま

精神科看護師を経験し、将来は精神科医を目指して今春から医学生になる僕のつぶやきです。概ね私見なのでご承知願います。

和製コメディ版17歳のカルテ?『クワイエットルームにようこそ』

自粛ムードが続いていますね。外出を控えている方も多いのでは。僕も基本はインドアなので、映画を観て過ごすことが多いですね。今日も映画を紹介します。
前回、1960年代アメリカの女子閉鎖病棟を描いた『17歳のカルテ』を紹介しました。

 

psy-nstodr.hatenablog.com

 

今回は日本の女子閉鎖病棟を描いた映画です。
 

クワイエットルームにようこそ

クワイエットルームにようこそ

公開年:2007年

 

松尾スズキによる同名小説を映画化。内田有紀主演、「言われるがまま」の彼氏役に宮藤官九郎、「ステンレスでできている、冷酷な看護師」役にりょう、患者役に蒼井優大竹しのぶ、ハリセンボン箕輪はるかなど…実力派、個性派の豪華俳優陣。絶対面白いやつ。
精神科テーマのほかの映画は、ずっしり重たくのしかかってくる感じがするものが多いんですが、コメディ要素が強く、楽しんで観たい方におすすめ。
タイトルにある「クワイエットルーム」とは、患者間での保護室の呼び名。危険行為に及ぶ患者を身体抑制下で隔離する、静穏に向かわせるための部屋のことです。オーバードーズ(過量服薬)により、昏睡状態となった佐倉明日香(内田有紀)は、気がついたら胴、四肢の「5点拘束」されていた。すぐにでも退院したい明日香だが、「病院ルール」がそれを阻む。次第に明らかになっていく入院の経緯に隠された真実とは…?
個人的な見どころを紹介します。
 

文字に起こしたくなる会話

コミカルなキャラクター勢による、台詞がいちいち面白いです。どの役者さんも、役に入り込んでいるというか。やっぱりすごいなーって思います。特に明日香とその彼氏、鉄ちゃん(宮藤官九郎)とのやりとりはノリも間合いも面白く、何度観ても笑ってしまう。
  

大竹しのぶの演技力

新入りの患者に優しくつけ込み振り回す、過食症患者を大竹しのぶが演じています。品性に溢れ、常に穏やかに、時に天然な部分もある素の大竹しのぶからは全く想像がつかないほど、きっついきっつい性格の患者を演じています。さすが日本を代表する実力派女優と圧巻されること間違いなし。
 

ミキ(蒼井優)が抱える闇

拒食症でありながら、他の患者に比べると人となりも良く、明日香との仲を深めていく患者、ミキ。摂食障害患者にとっての食事こそが治療で、それに前向きな姿勢をみせる彼女だが、どこか深い闇を抱えている…。それを言外に出せる演技力がすごい。
 
ストーリーの展開もとても面白いのですが、キャストがすごくいいですねーー。見どころがキャラクターばかりに注目したものになってしまった。笑 
ちなみに、舞台が「精神科の女子閉鎖病棟」であることやキャスト配置などから、前回紹介した『17歳のカルテ』のオマージュとよく言われますが、実際はどうなんでしょうか。個人的には、舞台は似ているけど、楽しみ方はまったく違って素敵な映画だと思います。シーンのひとつひとつに病みつきになること間違いなし。
  

ここまで読んでくれたあなたに…ざっくり精神科メモ

身体抑制
保護室のような隔離された部屋において、それでも患者に危険がある場合、身体を拘束具で固定することがあります。安全性は確保されますが、抑制部位の循環障害をはじめとする、さまざまなリスクが伴う対処法なので、十分な観察と早期の抑制解除を目指すことが重要です。 
医療保護入院
劇中では「強制入院」と言われていますが、この入院区分でいえば医療保護入院のこと。患者が、治療が必要な状態にもかかわらず、入院の必要性について了承できない場合、本人の同意がなくても、保護者の同意により患者を入院させることができます。